生徒の皆さん、おはようございます。
2年生の移動教室と3年生の修学旅行が再度延期となりました。どちらも、東京都区内や関西方面など、感染の危険性が高いところに出かけるということで、再延期は仕方ないものと判断しました。3学期には是非実施したいと思います。
一方、新島村の中だけでできる職場体験、式根島遠足、そして文化祭については、予定通り実施します。感染防止に気を付けながら、新島村の中でできることを頑張っていきましょう。
また、いくら感染防止に努めていても、感染してしまうこともあります。だれもすき好んで感染するのではありません。そのような時、感染した人を絶対に差別してはいけません。このことは強く皆さんにお願いします。
では、きょうの朝礼ですが、「自分では常識と思っていることも、あくまで自分中心の常識に過ぎないではないか」というお話をします。
皆さんは、ミニオンズという映画を知っていますか。私はこの映画を見て、何で目が一つの子たちがいるのかなと最初不思議に思いました。でも、見ていくうちに、目の数は関係なく、みんな映画の中で活躍しています。
では、この作者はなぜ、目の数が一つの子たちを登場させたのでしょうか。
これが道徳の授業でしたら、皆さん一人一人に考えてもらい、発表し合ってもらうところですが、きょうは朝礼で時間がないので、私の考えを言います。
「目の数は2つという常識で人を見るのではなく、目の数に関係なくみんな同じ仲間で、同じように活躍できるんだということを、この作者は訴えたかったのだろうな」と私は思います。みなさんはどう思いますか。
ところで、このミニオンズと同じような物語が日本にあるのです。一眼国というお話です。一眼国とは、一つの眼の国と書きます。江戸時代のお話です。
昔あるところに、六兵衛という見世物小屋を営む男がおりました。見世物小屋とは、珍しいものや動植物を人に見せることでお金をもらう商売です。時には、珍しい外見の人間まで見世物にしていました。ただ、これは江戸時代のお話で、現在ではそのようなことは人権問題として当然やってはいけないものです。
その六兵衛に、友達の宇曽米(うそべい)が噂話伝えに来ました。
宇曽米 おい、六兵衛。あの峠の向こうの国に、目が一つの女の子がいるという噂
知っているか。
六兵衛 知らねえな。目が一つの人なんているわけないじゃないか。もしいたとして
も、けがや病気で片方の目が見えなくなったんじゃねえのか。
宇曽米 いや、本当に顔の真ん中に丸い目が一つだけあるというんじゃよ。
六兵衛 それは、南蛮渡来の物語ミニオンズじゃんえか。あれは物語。おれはそんな噂な んか信じねえよ。
でもその夜、六兵衛は考えました。「宇曽米の話がもし本当なら、捕まえて見世物にすれば大儲けできるかもしれない。」宇曽米の言うことだから、嘘かもしれないが、でも、だまされたと思って、明日その女の子を探しに行ってみよう。
翌日、六兵衛は峠を越えて隣の国に行きました。すると、峠の見晴らし台に一人の女の子が座っ
ていました。六兵衛は声を掛けました。
六兵衛 もしもし、お嬢さん。
女の子 え、私ですか。何の御用ですか。
六兵衛 これはこれは珍しい。本当に目が一つだ。よし捕まえて、見世物小屋へ連れて行こ
う。
六兵衛はその女の子を捕まえようとしたところ、女の子は大きな悲鳴を上げました。すると、近くにいた人たちに敢え無く取り押さえられ、近くの奉行所に連行されてしまいます。 連行される時、その国の人はだれもが一つの目であることに、六兵衛はたいそう驚き、「目が二つあるという常識はところ変われば通用しないんだな」とつぶやきました。
いよいよ、六兵衛はお代官様から取り調べを受けることになります。
奉行所というところは、当時は、三権分立といったしゃれたものはなく、物事を決める立法も、物事を執り行う行政も、人を裁く司法も、全部まとめて行うところでした。
お代官 六兵衛といったな。その方、少女誘拐の疑いで取り調べを行う。
六兵衛 申し訳ございませんでした。
お代官 その方、面を上げろ。頭を上げ、顔を見せろ。
お代官 オ~、これはこれは珍しい。目が二つあるぞ。
えい、取り調べはあとじゃ、見世物小屋に連れて行け。
お後がよろしいようで、これで私の話を終わります。